forbidden

浮世絵春画-Forbidden Image展

会期 2002年11月20日〜2003年1月26日
会場 ヘルシンキ市立美術館
主催 ヘルシンキ市立美術館
後援 ヘルシンキ市

概略

今回フィンランドのヘルシンキ市立美術館において、世界で初めてといっていい本格的な「浮世絵春画」展が催される運びとなりました。

浮世絵春画の華麗で大胆な性表現は、つと日本のみならず西欧において注目されてきましたが、ともするとその大胆な描写や誇張された表現に関心が偏り、それらを正面から見据えてその意味を問おうとする展覧会はほとんどなかったと言っても過言ではないでしょう。

本展覧会では浮世絵春画を、決して特別な世界(遊郭)や特別な階層(有閑階級)の性愛遊戯のみを描いたものではなく、当時のあらゆる階層の日常的および想像的な性愛生活を表現したものであり、しかも庶民の男性にのみ受け入れられたものではなく、あらゆる階層および広く老若男女に愛好されたものとして、江戸文化のみならず、日本文化に通底する「色好み」の精神の十全なる発露であると見做し、単に日本独特の美術としてだけではなく、人間の性愛意識の貴重な文化表現であるという考えに立脚して企画する所存であります。したがいまして本展覧会では、まず第一に「浮世絵」の美術的完成度高さを提示することはもちろんのことでありますが、それと同時に「春画」の内容の多彩さと豊かさを示すところにあります。そして第三には人間の根源的な「欲望」の世界を描きながら、それらが単にポルノグラフィックな表現に陥ってないことを明らかにするものにしたいと考えております。

浮世絵春画の豊饒な世界を眺めていますと、江戸人は人間の根源的な欲望である「性愛」に対処するために、既成の宗教的・思想的規範に頼らず、人間誰しもが抱く「好奇心」の奔放な創造力を発揮してそのイメージ化を企て、それらを「笑い」のもつ人間的な批判力によって人間精神を柔軟にし、しかも「美意識」のもつ規範力によってそれらを堕落から救っているように思われます。そうした「性愛」への眼差しが、前世紀から論じられてきた「近代批評」の一助となり、二十一世紀の新しい人間観の足掛かりとなれば幸いであります。

早川 聞多